カオルの不定期日記



9年目詩人 2010年04月30日(金)

  2010 4/30 ( FRI ) 00:7am
今年も3分の1が終わった。

誕生日よりも「5/1断酒記念日」の方が
カオルには重要だ。
そこそこ達者でやっていれば自動的に誕生日はやってくる。

荒淫夜のごとし。
(ぶぶー。よいこのみなさんへ。
 正解は「光陰矢の如し」です)
酒をやめて丸8年。9年目に突入。
「なんで酒やめたのさ?」ってヒトはこの時期の過去日記を。

ブイーン。

なんの脈絡もなく「サラミ事件」について書こう。

あれはカオルが5歳の頃。
身もココロも肺も上履きも新品だった頃。
未来は希望で満ちあふれていた。
しかし。
このサラミ事件でカオルは「最初の希望打ち砕かれ体験」を。

その日のランチタイムのときとなりには仮名ケンちゃんが座っていた。
オレの弁当はごく普通のヤツ。
白米梅干し卵焼き。
しかしケンちゃんのヤツは猛烈だった。
白米の上にびっしりと輪切りのサラミが敷き詰められている。

オレは驚くより好奇心だった。
そのワイルドでジャンクでエキゾティックな物体に釘付けに。
「ケンちゃん。あの。非常に厚かましいお願いなのだが
 そのロックなカンジの食品とわたしの卵焼きを交換してはもらえまいか?」
ケンちゃんはさらっと「いいよ。こんなの食べ飽きたから卵焼きの方がいい」
交渉成立。
オレはゆっくりサラミを噛んだ。
うめー。超うめー。噛めば噛むほどうめー。
新品の舌先に染み込んでくる油がうめー。
これより美味いモノなどこの世に存在しねーな。

オレはダッシュで家に帰りミチコママに懇願する。
「実は今日のランチタイムで素晴らしいモノを味わった。
 明日の弁当にぜひそれを多めに頼みたい。
 ケンちゃんの情報によれば駅前のスーパーで売っているらしい」
「いいけど。その食べ物なに?名前は?」
「嗚呼。我が輩としたことが。しくじった。
 その食品名を訊いてくるのを忘れた」
「じゃあムリ」
「ちょっと待たれ。よし。
 わたしはそれを描いてみよう。
 それを見れば一目瞭然」
オレはまず弁当箱サイズの長方形を描いた。
その中に500円玉ぐらいの円を描いた。
なにかが足りない。そうだ。あの脂肪だ。
オレはその円の中にちいさな丸をたくさん描き薄紫色に塗った。
「これがその食品の絵だ。力作だ。
 明日の弁当愉しみにしている。
 さて。わたしはジャイアントロボを観る時間だ。よろしく頼んだ」

翌日。
オレはワクワクしていた。
今日のランチタイムでオレはかつてない至福を味わうのだろう。
油物の後の一服はきっとたまらないであろう。

ついにそのときがきた。
わたしは初めてパンドラの箱を開ける先人のように
慎重にゆっくりとフタをとった。

時が止まった。
いや。オレの脳が思考停止したのかもしれない。
「カオル君。それなに?」と訊ねるケンちゃん。
「わからない。わたしはいま非常に困惑している」
「ちょっとオレも食べてもいい?いっしょに食べよう」
ふたりは「レンコンの煮物」を食べ始める。
「んー。しゃくしゃくするね」
「そうだな。かなり淡白だ」
「ボクらがこの味を理解するには4半世紀ぐらいかかるね」
「ケンちゃん。わたしはさっき希望が壊れる音を聞いたよ。
 それはね。とっても虚しいヒトが虚しい鐘を叩いたような音なんだ」


くしゅしゅ。

また毎週。
 


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