カオルの不定期日記



1円と5円詩人 2010年04月25日(日)

  2010 4/23 ( fri ) 18:00pm
霧雨じゃ 濡れて歩こう とぼとぼと



オレは1円玉と5円玉があまり好きではない。
いや。
ちがうな。
彼らにはなにも罪はない。
むしろ彼らの「使い道のないカンジ」にシンパシーさえ感じる。

オレは198円という値段に困る。
200円渡すと1円玉が2枚返却される。
オバサマたちは「208円」を渡したり
「ちょうど」にしたり中には「203円」を出すヒトもいる。
レジの行列に彼女たちは気がつかない。
買い物袋をレジにどしっと置き
「確かちょうどあったはずなんだけど」と財布をごそごそと。
彼女たちの目的は「おおきい単位の硬貨」をなるべくつかわないようにすること。
後列ででノンアルコールビールと
200円を握りしめているオレのことなど眼中にない。
オレがイライラしようが
富士山が爆発しようが彼女たちは
訓練されたスパイのように「目的達成」に命を懸けている。

オレはレジの行列に迷惑をかけずに「小銭君」をうまく使えないかと。
「1円玉4枚と5円玉1枚の計9円」を
レジに向かう途中に握りしめていれば
「すべての端数に対応できる」とやっていたのだが。
なぜかレインハウスに1円5円は増殖していく。


そのちいさな世界では
百円ライターは使い切る前になくなるし
1円と5円は増えていく運命にあるようだ。

オレはポケットにある1円玉と5円玉を木製サラダボールに入れておく。
ハイチの災害の時にぜんぶ郵便局に渡したのだが
すでにサラダボールの4分の1ぐらいある。

何度も言うが彼らはなにも罪はない。
彼らはオレをいじめないし暴れたり野蛮な唄をうたうわけでもない。
ただサラダボールの中でひっそりとしているだけだ。

「詩人とレイン。なんかごめんね」
「ん?どうした?」
「にゃま?」
「ボクたちさ。あんまり価値ないから。。。」
「オレだって中古品だしレインだって野良猫だよ。
 たいして価値はないさ」
「でもボクらは5円玉君より価値ないんだ。
 それに5円玉君は針金ボロットの部品になったりさ」
「心配すんな。ちかいうちにさ。望んじゃいないけれどさ。
 またどこかで災害なんかが起きる。
 その時には郵便局に連れて行くからな。
 オマエらが20人ぐらいで助かるヒトもいるんだぜ」
「詩人。オレたちもここでずっと暮らせないかな」
「いいけどよ。ホントに価値なくなっちまうぞ。
 スーパーのレジとかでがさつに扱われてきたから
 ちょっとナーバスになってるだけだよ。
 そのうち硬貨の本能が騒ぎだすからさ」
「詩人。あの曲かけて」
「ん?ピンクフロイドか?」
「そう。マネー」

レインはこたつに寄りかかってうたた寝。

最終章。

ある夜。
夫の暴力に耐えられなくなった妻は
泥酔して高いびきの夫を殺そうと決めた。
なんて見苦しいスガタ。
力と屁理屈だけの酔っぱらい。

妻は靴下にサラダボールの中の1円玉と5円玉を詰めて
夫のアタマを何度も殴りつけた。

妻は靴下を逆さまにしてコインをぶちまけると
血の付いた靴下を厳重に裂いて生ゴミといっしょにゴミ捨て場へ。
そして警察に電話。

「ドアベルが鳴って宅急便だと言うのでドアを開けた。
 マスクをしたオトコが入ってきて夫を殴り現金や貴金属を持ち去った。
 小銭には目もくれずに」
妻はそう警察に説明した。
「奥様のそのアザは犯人に?」
「そうです。本当に恐ろしかった」
妻は想った。
はじめて夫の暴力が役にたったわ。


See you boys.
Good night girls.
 


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