カオルの不定期日記



カオルとレインブラック氏の対談詩人 2009年04月20日(月)

  2009 4/19 (sun) 23:40pm
暖かい1日だった。


あらすじ。
新曲作りの気晴らしに
カオルは思想家レインブラック氏を訪ねた。

「こんちくわー。
 いろいろとややこしいことを訊きに来ました」
「カオルか。久しぶりだな。
 オマエはコナコーヒーが好きだったな。
 いま用意させる。
 さて。なんの話だ?」
「えーと。希望とか絶望についてです」
「カオル。時間はあるのか?」
「え。新曲やってるからコーヒ−3杯ぐらい飲んだら帰りますよ」
「あのな。コーヒ−3杯分で語れる話じゃない」
「まあその適当にみつくろってお願いします」
「ったく。
 まずヒトは生まれた瞬間に絶望の状態にある」
「いきなりわかんないです」
「生まれたらば必ず死ななければならない。
 どんなに素敵な人生を過ごせても必ず死ぬ。
 生と死はセットだ。歯磨き粉と歯ブラシのように」
「オレなんか磨き粉なしで歯ブラシする時もあります」
「オマエのその類いのジョークはすべて無視する。
 生まれたら死ぬのかあ。嫌だなあ。それが根源的な絶望だ」
「ちょっとわかる」
「だから少しでも楽しい素敵な人生を過ごしたいと想う。
 それが希望だ」
「なるほど」
「自分の愛するヒトやペットが
 自分の望まないタイミングや死に方で死ぬとヒトは絶望する。
 いつか必ず死ぬとわかっているはずなのに悲しい。
 それは漠然と『どうせ死ぬならこういう風に』と考えていた希望が
 バッサリ絶たれたからだ。希望が絶たれるのを絶望と言う」
「さすがレインブラック。この葉巻をあげます。安物です。
 もうコーヒー飲んじゃったからおかわりを。
 あのさ先生。オレはあんまりテレビとかニュースとか観ないんだけどね。
 なんか世の中がややこしくなって便利になったのか
 不自由になったのかわかんない。
 それに奇妙で不自然なニュースとか温暖化とかさ。
 どう考えてもこの星に希望を見出せないんだ」
「それもまた絶望。
 でもカオルは唄うだろ。こんな時代嫌だって。
 風通しが悪いから風穴を開けたいって。
 それが叶わぬのならせめてレインと静かに暮らしたいって」
「まあそうですけどね。大半の人にはうざってーと言われますけどね。
 でもオレはオレが暮らしやすい世界が好きだから」
「それもまた希望。
 もしそうなったら嬉しい。
 その希望のためにオマエは唄い書きつくる。動く事。それが希望だ」
「じゃあオレは正しいのかな?」
「それはわからない。正しいとか悪いの価値判断は時代によっても
 個人によってもまったく違う。
 ある時代では敵国の兵隊をたくさん殺した兵隊が讃えられた。
 ある時代では敵国のコトバを上手に喋れる商社マンが讃えられる。
 どこかの独裁者もある人は諸悪の根源だと言い 
 ある人はこの国の希望だとも言われる」
「ふむ。
 あの。
 どうやら非喫煙者が勝利したような時代でオレなんか肩身が狭い。
 せめて駅に立ち食いソバみたいに喫煙スタンドとかつくってさ。
 入場料100円で中ではタバコもコーヒーもワンカップも売ってる。
 そういうのがあればいいのに」
「じゃあオマエはその実現に対して全力を尽くすか?」
「いや。こうみえてもけっこう忙しいからそれは無理かな」
「でも喫煙スタンドがあったら嬉しい。
 その実現を公約にして立候補したヤツに投票するか?」
「する。オレの代わりに希望を託す」
「そのコトバを忘れるな」

カオルは3杯目のコーヒーをひとくち飲んでこう言った。
「先生。オレはいまの時代がややこしくて不自然で好きじゃない。
 そんでね。いろんなヤツに訊くけれどみんなそう言うんだ。
 昔の方がよかったってね。
 なのにどうしてみんなが望まない方向に時代は変わるんだろう?」
「それはもっと時間がある時にでも。
 どんな新曲をつくっているんだ?」
「いろいろ。いまやってるのは愛しのレインの曲」
「その曲をどんな想いでつくっている?」
「いや。なんというか。適当マシーンなんだけど
 唄っていて自分が穏やかになれるカンジかなあ」
「そうか。その唄が売れたら嬉しいか?」
「嬉しいけどオレ売れたコトないから」
「じゃあその唄が売れなかったら悲しいか?唄に価値はないのか?」
「あんまり関係ないかな。オレが好きで自発的にやってる事だからさ。
 まあレインが喜んだらいちばんだけどアイツはネコだからね。
 コトバがわからないし。でもね。その曲をやっているとね。
 まあオレの勝手な判断だけどレインが静かなんだよ」
「カオル。レインはいつか死ぬぞ。覚悟はできてるのか?」
「そんなもんわかんないよ。いちおうしてるけどさ。
 たぶんレインが死んだらオレは相当にピンチだよ。
 だからさ。今度の唄にはね。
 『オレより先に死なないでよ』って書いた」
「カオル。そろそろコーヒーがなくなるぞ」
「お。もう帰らなくちゃだ。
 またいつか来てもいい?」
「ああ。かまわないよ。
 カオル『またいつか』って希望だよ」

カオルはいつもより背筋を伸ばして帰りました。
空に月を探しました。
帰るトレインが言いました。
「にゃままま」


おしまい。
 


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