カオルの不定期日記



喫煙所詩人 2009年03月31日(火)

  2009 3/31 ( teu ) 20:30pm
晴れていたがまだ春とは呼びたくないな。


JRの喫煙所が今日でなくなる。
オレは「時代の都合」にはいい加減に慣れたつもりだけれど
やっぱり寂しい。

夕方。
ホームのはじっこの喫煙所にワンカップや缶ビールを飲みながら
座り込んで談笑する作業着姿のオトコやサラリーマン。
家でひとりで飲むのはつまらない。
でも飲み屋に行くにはカネが足りない。
オレたちには駅のホームが分相応だ。

しかし。
「清潔な時代」はそれを許さない。
クレーマーたちの苦情を排除するには「喫煙所の完全撤去」が必要なのだろう。
苦情に対応する駅員も疲れたんだろう。

ばかみてーだ。

でも。
大喜びしているヤツもいるんだろうな。
おめでとう。
キミタチの「感性」が勝利した。
明るく清潔な社会作りに今度とも邁進したまえ。
オレは路地裏にしゃがみ込んで夕焼けでタバコに火をつけて
ライ ラライ ライ 「イライラ」だ。

数年後。
「ねえとうちゃん。このホームの白い四角の線はなに?」
「ああ。昔な。ここに灰皿があったんだよ。喫煙所が」
「なんでなくなっちゃったの?タバコ吸うヒトが困るじゃん」
「そうだな。でもな。
 タバコの煙りが大嫌いだってヒトが文句を言ってね。
 副流煙で被害を受ける。髪や服にニオイがつくってね」
「ふくりゅーえんてなに?」
「オレはタバコを吸うだろ。
 その時に吐き出した煙りがカラダに猛烈に悪いんだってさ。
 科学的に証明されてんだってさ」
「それならオレはとーちゃんのふくりゅーえんをずっと吸ってるぞ。
 それにこの前内緒でとーちゃんのピース吸った」
「そうか。うまかったか?」
「アタマがくらくらした」
「オレは2009年の3/31に喫煙所がなくなった時に
 アタマがくらくらしたよ」
「どういう意味?」
「無力感」
「むりょくかん?なにそれ?」
「んー。ガキが絶対に味わっちゃいけない気分のことだ」
「よくわかんない」
「それでいい」
「今日も喫茶店いく?オレはココアがいい」
「じゃあ行こうか。ついでに葉巻買ってこいよ」
「とーちゃん。カードないと売ってくんないよ。オレ子供だから」
「根性で買ってこい。釣りはやる。
 とーちゃんが死にそうで最後の願いなんだとか言えばいい」
「オレは嘘つくのか」
「いや。わりと嘘じゃない」

嗚呼。

もし。
「排気ガスが人体に猛烈に悪いと科学的に証明」されたら。
皇居の周りを走るマラソンピープルは。
怒るだろうか。

もし。
「胎児にジミヘンドリックスの歪んだエレキが
 とてもよい影響を与えると科学的に証明」されたら。
ジミのCDは飛ぶように売れるのだろうか。
いや。
ダウンロードだろう。

もし。
「携帯の電波が脳に重大な悪影響が科学的に証明」されたら。
ヒトは携帯を捨てるのだろうか。

もし。
「エアコンや排気ガスが地球にすげー悪いと科学的に証明」されても。
オレは電気ないと唄えないし
打ち上げで遅くなった時は誰かの車に乗るだろう。
「あの。この車はタバコ吸ってもいい?」と苦笑いしながら。

今夜はこの辺で。

また。
明日。
 


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