カオルの不定期日記



ナマステ詩人 2007年01月16日(火)

  2006 12/29 (fri) 16:50pm
冷たい風が雲を吹き飛ばしたようで15時ぐらいに半月が見えた。


「本当に冬がくるんだ」と想わせるような冷たい風。
テクテクとモクモクしながらしょぼくれた町を散歩した。
カサカサに乾燥した落ち葉を踏むとクシュっと冬の音がした。

ネパールのヒマラヤ付近の町には風が吹かないらしい。
でも冬は日本よりずっとずっと寒いらしい。
今日飯を喰った「ネパール料理屋」のおばさんが言ってた。

以前から気になっていたのだがその店に行ったのは初めてだ。
オレは基本的に「カレー」というものは
相当にガッツがある状態じゃないと食べられない。
今日はガッツというより「退屈」で「刺激」が欲しかったから。

とてもよい店だった。
洒落たカンジは全然なく簡素というか質素というか暖房も入ってなかった。
ヒマラヤの写真とネパールと日本の国旗。
音楽はインドの流行歌なんだろう。
穏やかなネパール人のおじさんとおばさんがふたりでやってる。
流暢な英語と片言ではあるが非常に丁寧な日本語を話す。
店名は特にないみたいだ。
そこは「元餃子の店」だったようで以前の店名が綺麗に剥がされていなくて
その上に「ネパール料理の店」とだけ書かれている。

チキンカレーとベジタブルカレー。
ローティー(ネパールのナン)とサラダとヨーグルト。
そしてラッシーを頼み値段は900円だった。
「お時間はありますか?」とおばさんが言う。
オレはヒマだから。夜までに喰えればいい。

包丁で何かを刻む音がする。
手際がいいのかよく切れるのかリズミカルで真剣な音だ。
20分ぐらいすると「焦げるいい匂い」が。
様々な香辛料が食欲中枢を刺激する。
とても美味しいカレーだった。
焼きたてのライ麦で作られたローティーは4枚もあり満腹になる。
おばさんが「ローティーを丸めてカレーをすくう食べ方」を教えてくれた。
「納得のいく食材」が日本では手に入りにくいらしいので
おじさんが定期的にネパールまで買い出しに。
チャックマサラではなくガラムマサラを使用するのだという。
久しぶりに化学調味料の使用されていない料理を食べた気がする。

「今年の仕事は終わりですか?来年はいつまで休みですか?」おばさんが訊いてくる。
返答に困る。無職と言えば無職だしプロと言えばプロだし。
オレは苦笑しながら曖昧に首を振った。
おばさんは話題を変えた。「遠くから来てくれたのですか?」。
オレの家から徒歩10分ぐらいのトコロだ。
常識的に考えれば「すぐ近く」なのだが。
地図的に考えればネパールの方がずっと遠いのだが。
なぜか答えられなかった。
「距離」とは?

(ここでカオルは別の疑問も浮かんだのだが
 長くなりそうなので「疑問のアウトライン」だけを記す。
 「逢う回数・一緒にいる時間」と「絆の深さ」は比例するのか?
 オレはしないと想う。たぶん「密度」の方が重要だ)

カレーが食べられるようになったというのは回復してきているのかもしれない。
散歩の時に腹が減ってる時に何度もその店の前を通った。
しかし入ることはなかった。
入れるようになった。遠い道のりだった。
「また食べにきますよ」
「ナマステ」

オレはネパールのことを何も知らない。
人口も通貨も交通も流行も宗教も言語もモラルも。
風が吹かない町?
おばさんは「海がないから」と言う。
オレは信じた。
地理学者や気象学者がなんというかは知らない。

とにかく。
風の吹かない町からやってきた穏やかなネパール人の夫婦が経営する店の
カレーやローティーはとても美味しかった。
オシャレなウエイターもいない。スポーツ新聞もワイドショーもない。
消費税も領収書もない。暖房も自動ドアも対応マニュアルもない。
そういうシンプルさをオレは好む。

おばさんが綺麗な赤い腕輪をしている。
「そのブレスレットは素敵ですね」
「これですか?色は関係ありません。
 これはガラスです。『結婚をしている』という意味です」
そうか。
ネパールではプラチナの指輪とかではなく
壊れやすい「ガラスの腕輪」がその証しなのか。
ゴールドやシルバーは壊れにくいだろう。
その考えが「ネパール文化」なのかは知らないが
「壊れやすいモノを証しとして身につける」というのは素敵だな。
大事にする。いつも意識する。壊れないように。

「ガラスの腕輪をしているネパールガールを口説いてはいけない」と肝に銘じよう。

ナマステ。
 


- Web Diary ResVersion ver 1.09 -